agitato
[アジタート:激情的に]
-事情と情事 祐巳side-






もうどうしようもなくて。
ただただ、触れたい。
私は、貴女に触れたい。
だって、好きだから。

聖さまが、好き…だから。

だから、触れたい。

お願いです…解って、下さい。







「すき…だから…したいんです」

そう告げて…解ってほしい気持を込めて、唇にそっと唇を重ねた。
そして、ゆっくりとその滑らかな肌に手を滑らせていく。

すると息を飲むように聖さまの舌がぴくりと動いて。
重ねている唇の間から、微かな声が洩れた。
その途端、なんともいえない気持が祐巳を襲う。

好き…どうしようもないくらい、好き。

聖さまがいつも祐巳にするように、親指で胸の先を触れながら、ゆっくりと胸のふくらみに力を加えてさするように撫であげる。

「聖さま…」

小さく声を漏らす聖さまに、愛しさでいっぱいになる。
もっと、もっと祐巳に知らない聖さまを見せてほしい。
祐巳だけに。
他の人になんて見せなくていいから、祐巳だけに見せてほしい。

細い首筋から綺麗に浮いた鎖骨へと、舌を這わせていく。
そして…ゆっくりと胸へと。

聖さまは眉を寄せて何かに耐えるような表情を浮かべている。
その中に、艶やかな何かが見え隠れしていて。
祐巳はその何かが見たい。
そして知りたい。

見せてほしい。
教えてほしい。
お願い。

ゆっくりと手を滑らせながら軽くその肌に歯をたてる。
そして、唇が柔らかい胸にたどり着いた時、聖さまが息苦しそうに呟いた。

「…ダメだって…もう、やめ…」

…嫌。
絶対、やめない。
聖さまだって、祐巳が「やめて」って云っても、止めてくれないじゃないですか。

…もちろん、祐巳はホントにやめてほしい訳じゃない。
恥ずかしくて、怖くて…つい云ってしまう。

もしかして、聖さまはホントに止めてほしいのかな…もし、そうだとしたら…

…でも。
祐巳は、聖さまの胸の先の…部分に唇で触れた。

「く…!」

聖さまが、何かを我慢する様な声を漏らして、祐巳の肩に手を伸ばしてきた。
肩を包むように掴んで、唇を噛んでいる。

目を上げて聖さまを見ていると…酷く…艶めかしい表情になっていて。
思わず、祐巳は唇で触れていた胸の先を口に含んでしまう。
すると、聖さまはギュッと目をつぶってしまった。
唇を噛んで、何かを耐えて。

ドキドキする。
もう、祐巳の心臓は毀れてしまうんじゃないかってくらい、ドキドキしてる。

「聖さま…好き」

本当に、どうしようもないくらいに、好き。

もっともっと、いろんな聖さまの顔が見たい。
見せてほしい。
本当に。

だから、祐巳はいつも聖さまにされているように、手を動かしていく。
そう、ゆっくりと。

脇腹に手を滑らせていこうとした。

その時、急に聖さまが祐巳の肩をグッと掴んで引き寄せた。

「きゃ…っ!」


背中に、衝撃。
…とは云っても、柔らかな衝撃。



…え?


いったい、なにが起こったの…?
気がつくと、祐巳は聖さまを見上げていた。
背中には、シーツ。

聖さまの表情は、何かに耐えているような、焦っているような…そんな表情で。
瞳は…潤んで揺れていて。

「もう、許さない…」

…え…?

「聖さ…っ…ん…っ!」

荒々しく、唇を奪われて、息が止まる。
きつく、まるで呼吸するのも許されないみたいに、舌を吸われてしまって。
祐巳は息苦しさに、思わず聖さまの腕に爪を立ててしまって、ハッする。

駄目、聖さまを傷付けちゃう…

パッと手を放した祐巳に、まるでそんな事は対した事じゃない、というように聖さまは唇を離すとフッと笑いを漏らした。
そして、角度を変えて再度口づけてくる。

なんだか、怖い。
いつもの聖さまとは違う。

荒いキス。
まるで舌を噛み切られてしまうんじゃないか、なんて思うほど、キツく吸われ、絡め取られている。
でも、祐巳に触れる指はいつも以上に優しい。
毀さないように、傷付けないように、とでも云うように触れてくる。

そのギャップに、祐巳は翻弄されてしまう。


唇が、解放されない。
絡められる舌に溢れてしまう唾液が、口の端から流れ落ちるのを感じて、恥ずかしくなってしまう。
でも…どうしようもなく、高まってしまう。
『求められてる』って思ってしまう。

ずるい。
こんなの、ずるい。

聖さまに比べたら、祐巳なんて…
でも、祐巳だって聖さまを…

指が、肌を這う。
滑るように、こねるように。

そんな動きに、どうしようもなくなっていく。
息もつけない。
舌を捕らえられて、体にはもう力も入らない。
そして、するり、と足の付け根に指が滑る。
でも…敏感な所には触れずに。

焦らすように、更に高めるように指が滑っている。

「い…やぁ…」

それが切なくて、やっとのことで顔を背けて唇から逃れた。
そして聖さまの手から逃げようと体を浮かす。
でも、聖さまは逃がしてくれない。
甘く掠れた声で「ダメ」と云う。

「…逃がさない」

ゾクリと、肌が粟立つ。
そんな声で云われて、逆らえる訳がない。
甘くて、それでいて、逆らう事を許さない声。

祐巳は、聖さまに敵わない。
でも…祐巳ばかりじゃなく、祐巳だって、聖さまを愛したいのに。

思わず、恨みがましい目を向けてしまう。

「ず…る…い…」

呟くと、聖さまは苦く笑ってまぶたやらこめかみやらにキスをくれる。

「うん…ズルいんだ…私は」

本当に、ずるい。
そんな風にして、こんな風に優しくして。
優しくて、激しい。

「わ…たし…ばっかり…や…」

祐巳ばかりが、聖さまに追い上げられて…切ない。

「…祐巳ちゃんばかり…じゃないよ」

ふっ、と祐巳から目を逸らすとそう呟いた。

祐巳ばかりじゃない…って?
だって、祐巳を追い上げて、焦らしているのは聖さまなのに…?

聖さまの不思議な言葉に気を取られたのを見計らったかのように、聖さまが祐巳の膝に手を掛けた。

ドキン、と心臓が大きく跳ね上がる。
何故か解らない。
でも、聖さまが何をしようとしているのか、解った。

怖い…!

「せ、聖さま…っ!ヤダ…ッ」

膝に掛けられた手に、力が込められる前に、祐巳は膝を閉じる。
だけど…もう祐巳の体は、聖さまの力には敵わない。
キスで、手の動きで、体に力が入らないから。

ヤダ…、嫌だよ聖さま…!

でも…祐巳のお願いは、きっと聞き入れてもらえない。
声が、出ない。
でも目で、遮ろうとする手の動きで訴える。

「やぁ…っ!」
「…ごめんね」

謝らないで。
謝るのなら、やめて…!

難なく、足が開かれてしまう。

恥ずかしい…!
顔から火が出そう。

聖さまを見られない。
だって…開かれてしまった足の…

え?うそ…!
ヤダ…やめて、聖さま!


「ダメ…ッ!いやぁ!」




祐巳は聖さまの髪に指を沈めて引き離そうとするけれど…
初めての衝撃的な出来事に、体も気持もついていけなくて。

恥ずかしい
怖い
…信じられない


聖さまの行動に、祐巳の心がついていけない。

どうして、そんな事が出来るの?
恥ずかしくて、心臓が毀れてしまいそう。
恥ずかしくて、消えてしまいたい。

堪えたいのに、声が漏れてしまう。
はしたない…って思うのに、我慢出来ない。

体が、反応してしまう。




「もっと、感じて?」



これ以上無理。
心臓が本当に毀れてしまう。

でも、聖さまは祐巳を更に追い上げる。


怖い

怖い

祐巳が、祐巳でなくなってしまいそうで…怖い





「せ…い……さまっ」




こわい

ひとりは、いや

いっしょじゃなきゃ、いや


ゆみだけなんて、いや





たすけて…!


「聖さま…!」



も…ダメ…っ





そこで、強い刺激に襲われて…真っ白になった





…to be continued



20050625


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