『君になら殺されてもいい』


『君になら殺されてもいい』

そんな事を考える自分が嫌だ。
最悪だと思う。

だって、そんなのは自分ばかりが幸せじゃない?
自分だけが幸せじゃない?

深くソファに座って、目を閉じた。




こんな事を考える時は、全ての思考が良くない方向に進んでいく。

どうしようもない自分が、嫌になる。
いや、嫌になるも何も、もうずっと嫌なのかもしれないのだろうけど。

いや、あの頃よりは随分とマシ。
生き易くなっている分。

それでも、たまにコンナコトを考えてしまう。
思考が囚われる。
いくらあの頃よりは『変わった』とはいえ、人間、根本的な部分はなかなか変われないのだろう。

こんな事を考えたって、なんにもならない。
ただ自分がキモチイイだけなんだから。

そして、自虐的に笑うだけ。


「あーあ」

私はわざと声を出して大きく伸びをする。
こんな考えは、さっさと消してしまうに限る。

消したい。
消えてしまえ。
さぁ早く!

…でも、簡単には消えない。
それは経験上、嫌という位解っている。

一度囚われた思考は、簡単には明るい方へは向ってくれない。

私は昔よくやっていた様に自分の体を抱きしめる様にしながら横になって目を閉じた。


引き上げてくれる腕は、今はまだ無い。
ここには今、自分しか居ないのだ。






「…聖さま?眠っているんですか…?」

約束の時間が、君を連れてくる。




『君になら殺されてもいい』

君の顔を見れば、そんな気持ちは消えてしまうから。
君と生きて行きたい私に戻るから。

ほんの少し、こんな私を見逃して。




執筆日20041117


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